2011年01月16日

「ドーン」

…と言っても爆発音ではなく、「夜明け」の「DAWN」のこと。
そんなタイトルの本を図書館で借りて読みました。

ドーン (100周年書き下ろし)ドーン (100周年書き下ろし)
平野 啓一郎

講談社 2009-07-10
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平野啓一郎の作品は初めて読みましたが、芥川賞作家らしい重厚な表現(注:自分がよく読んでいるミステリーとの相対比較)で、登場人物の葛藤がみっちりと描かれており、なかなか重たい作品でした。ただ、ストーリー自体は火星へのミッション、そこで発生した事件、そして米国大統領選&その選挙を巡る陰謀…など、エンターテイニングな内容になっており、楽しく読み終えることができました。

それよりも感心したのは(という言い方もアレですが^^;)、本作で描かれている近未来の描写でした。

世界中の監視カメラの映像を対象に任意の人物を顔検出で検索することができる「散影」システムや、AR的な技術など、現在の最先端テクノロジーの20年後くらいの発展形が物語の中に違和感なく描かれており、ある意味、我々研究者がたまに想像する20〜30年後の未来よりも的確(というよりはリアル?)な予測にも感じました。研究者目線だと、どうしても技術的な観点からの予測になってしまうのですが、本作では、技術の発展にともなう人間の生活、社会全体、そして人間の心理的な変化にまで踏み込んだ描写になっており、よりリアルだなぁと。

そして、本作のコアとなっている「分人主義(dividualism)」という考え方(人は単独の人格で構成されているのではなく、相手によって使い分けられている複数の人格からなる)も、ソーシャルメディアの普及によって複雑になってきている現在の人間関係の発展形の1つにも思えて、今後ソーシャルメディアを対象に研究をしたり、実際に利用したりする身としてはいろいろと考えさせられる内容でした。現在、そもそも存在する考え方なのか、作者が本作のために作った考え方なのかはわかりませんが。。

フィクションではありますが、いろんな意味で人類、そして技術の未来について想像をかきたててくれる良作でした。
posted by ほあほあ at 23:25| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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